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見栄のために体育会に入部してしまう | ||||
元来運動は大の苦手、走ればビリケツ、すこし歩いてもすぐに疲れる私は運動というものにスーパーコンプレックスがあった。ドッヂボールをしていても顔にボールがあたる漫画のようなシーンが実際に何度もあったくらいである。ちなみに高校のときもおでこでボールを受け止めたことがある。運動は苦手なくせに中学高校時代の負の時代をリセット(=大学合格)したということもあり、大学生活ではなにかスポーツをやってみたいなあという漠然した思いがあったのだ。 そしてももうひとつのコンプレックス。それは学歴である。高校受験に失敗し、さらに現役合格も出来なかった私は極度の学歴コンプレックスに陥っていた。そこでとにかく自分がどこの大学に通っているかをPRしたくてしたくてたまらない時期だったのである。そこで気づいたのが体育会系の倶楽部の人たちのジャージやバックだ。大学の名前がどかーんと書いてある。ああ、体育会に入れば名前のPRが簡単にできるんだと痛く感動していたのである。 4月はそんな僕にでも倶楽部勧誘の声がかかる絶好の季節。4月のとある日、ある看板の前に立ち止まってしまった。綺麗な風景と楽しそうな笑顔。なんだろうこの倶楽部は?と思ってたちどまった瞬間に後ろから2人組に声をかけられた。 「君、興味あるの?」 「あ、はい、綺麗だなあと思って」 「じゃあ、部室に来て。説明するから」 「???(しまったああ!)」 こんな調子で拉致されたのが結局4年間やることになった体育会ワンダーフォーゲル部との出会いだった。運動経験ゼロのオタクがあろうことか、体育会の扉を叩いてしまったのである。 登山にはすこし興味があったのはたしかだ。父も登山好きだったし、見せられた写真に写っていた冬季用のヘルメットをかぶり、ピッケルを持ち、大きい荷物を持った先輩たちの姿は僕にはとうてい達しえないである憧れの姿であったこと、その姿は立派な
それに加えてワンダーフォーゲルという名前をはじめ、登山で使う用語が大好きな |
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ワンダーフォーゲル部はオタクの集まり | ||||
入部してそうそう、部室で先輩に「おい、小林源文知ってるか?」と一冊の本を手渡された。なんとあの「黒騎士物語」である。これ読んで男の精神を学べと言わ。おいおい、この本はせりふも暗唱できるくらい読んだっちゅうの。『俺のケツを舐めろ!!!』である。この時はまだ体育会系登山部が何をするところか明確に分かっていなかったこともあるが、インドア系オタクがいまだかって経験したことのないレベルの肉体と精神の限界にこの後直面していくのである。 先輩は身なりはGパンに白いポロシャツ着て高校時代はサッカーやっていたという外見だけみたら、とても登山する人とは思えないさわやか系の人に見えた。(当時では)その人がこんな漫画を勧めるだなんて元オタクに違いない。問うてみるとはたしてそうであった。しかももうひとりの先輩も軍事オタクだったのだ。なんということだ。その時はまったく知らなかったのだが、日本のワンダーフォーゲル活動や山岳部は兵隊あがりの人たちが指導してきたこともあって、伝統的に他の運動部と比べ軍隊的な雰囲気や要素があちらこちらに盛り込まれていたのだ。そして、先輩も同期たちもどうも一癖も二癖もある、おおよそテニス部とは正反対の、合コンやクリパとは無縁の集団に囲まれてしまったのである。 こうして、大学入学という人生最大のリセットのチャンスにまたもやオタクの巣窟のようなワンダーフォーゲル部に入部。ここで僕の |
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