オタクは俺だけ

4畳半の下宿も決まり、オタク系雑誌のみ部屋に放り込んで大学生活がスタート。ドキドキワクワクの連続である。そして迎えた1回生最初の授業。いつもと変わらないオタクファッションで教室に行ってみると、あれ、なんだか視線が痛い。ふと周りを見回せばまるでトレンディドラマに出てくる主人公のように着飾ってきっちりさっぱりした身なりの人たちが沢山集まっているではないか。これがおれのクラスメイト?えっ?まじっ?

そうなのである。いわゆるオタク系ファッションは私だけで、女の子も男の子もスマートでみんな格好いいのだ。それに比べておれは一体・・・ひとりだけオタクがポツンである。さすがにこれはヤバいと雰囲気で察したのだ。大学デビューという路線もありだなと思っていたのと、なにかと世間体は気にする性格だったこともあり、とにかくこの状況はや・ば・い・


しかも僕が志望校に選んだ学校というのは実はこの地方ならでは付き合いのなら×××と言われるほどのモテる大学だったのだ。

そんなこと県外のオタクは知らん
っちゅーのお・・・。

しかも女性と同じ教室でじっくり勉強するなんてそれこそ中学卒業以来なのだ。予備校時代は合格という短期目標があったため、視線なんてどーでもよかったが、さすがにこの厳しい視線は気になる。なんとかせなあかん。このままで憧れの大学生活が駄目になってしまうとこのとき真剣に決意したのであった。大学に入ってもオタク〜♪ト思っていたのに外圧であっさり転向である。


とりあえずファッションチェック(汗)

まっ、まずは身なりからだ!とばかり、みんなの服装をそれとなくチェック。あ、みんなGパン履いているんだ、白いポロシャツで、襟を立てるのが流行してるのかな、とキョロキョロしまくり。これまで模型雑誌や古い写真をみながら「この車両の泥除けの形状はどうなってるのかな」「この戦車は何型かな」と観察&推測に割り当てていた全パワーを服装チェックにつぎ込んだ。しかし肝心の金がない。仕方ないのでJRの高架下商店街の古着屋でGパンを購入したが、目利きが悪くてよく見たらケツに穴が空いていた。おそるべしナニワ商法とさっそく衝撃も受けた。
ファッションチェックなるものを心がけたが、結局センスが無いのはいかんともしがたく結局ダサさは払拭できず最後はどーでもよくなるのであるが、最初に受けた衝撃の結果、ここで「僕はミリタリーオタクです」とはとても言い出せず、結果として大学オタク一色生活は見事に崩れ去ってしまったのである。

まだバブルの余韻が残る時代。こんなご時世に「ミリタリーオタクです」といおうもんならはみごにされそうな勢いだったので、趣味も語らず、とにかくさわやか君に変身しなければならないというやや脅迫的観念にとらわれてしまったのだ。このあたりが、小・中学でイジメを受けたトラウマかもしれない。だが、生き抜くためには必要なのだ。当時の僕としてはミリタリーオタクであることを隠すというのは、これまた人間否定されるくらいの重たい命題であった。きっと信仰を弾圧されるというのはこういう気持ちなんだろーなあ・・・。


  
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